夏の終わりの怪談話 「携帯電話」 最終話
2016-09-14 Wed 00:18
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麻子の目の前には携帯電話が一つある-



それは、今時のスマートフォンではなく、
少し前のガラパゴス系、
いわゆるガラ系の二つ折りのモバイルだった。




今年三十代になる麻子だったが、
パソコンのキーボードを打つ仕事をしていたため、
スマートフォンに替えるのに抵抗があり、
いまだにガラ系の携帯電話を使っていた。




そんな彼女も来年には、
同級生だった彼と結婚する予定になっていた。





・・ある時・・・


その古いと言えば古い携帯電話に、
同級生のゆかりから友達の美依が亡くなったと、
突然の訃報が舞い込んだ・・。





「麻子、美依が亡くなったのを知ってる?
彩花から電話があって・・
私、同窓会の予定を聞く幹事なんだけど」




「・・そうなの・・・」




「伝えられていなかったけど
何か訳ありな亡くなり方だったみたいで」




ゆかりは特に彼女と親しかったため、
声も上ずっていた感じだったのだが・・。




「訳ありね・・・」





・・ふーんと麻子は思った。



途中にはあまり良い感情だけだった事も無く、
複雑気持ちにもなった・・。




美依は美しく、
同級生の中でも群を抜いていたような美人で。
何ヵ月前だろうか?
彼女から連絡があって会った記憶がある。





しきりに昔の高校時代の話になり・・



懐かしさと共に甦ったのは、
麻子の好きだった先輩と彼女が、
何の気なしに付き合い出して、
結果、少しだけ付き合っていた麻子が、
振られた形になった事が思い出されたのだ。





・・ふと、麻子は悪戯に、
彼女の携帯にメールをしてみたくなり、
まさかねと思いながらも、
美依のアドレスに他愛ない言葉で送信をしてみた。





『ご機嫌いかがでしょう?私は相変わらずですが』




ほんの出来心だった -




もちろん、メールは返っては来ずに、
その日は反対にほっとしたのだったが・・。





だが次の日、
そんな悪戯心に後悔に苛まれる結果になった。





『お久しぶり、麻子は元気そうね
私も変わらずに過ごしているわよ』





・・え?・・・



元気って、変わらずにって?・・




それはアドレスも変わらず表示されている、
彼女、美依からの返信のようだったが。




まさかそんなと麻子は驚いてしまった。
美依からって、一昨日、
ゆかりから連絡があったばかりではないか。
彼女は前に亡くなってしまったという連絡。





麻子は少し焦りながら、
美依らしきモバイルへの返信をまた送ってみた。




『本当に美依なの?だったら会えないかしら』




・・たぶん、彼女の母親とか、
まだ亡くなったばかりなのだから、
誰か親族や身近に居る人のイタズラだと・・。




。。



そのメールに返って来た内容は、
更に麻子を恐怖に陥れた・・。




『良いわよ、
週末、土曜日なんかはどうかしら?』





自業自得とは言え、
返信の通りにしなくてはいけない気になった。





『では土曜日、何処にすれば良いかな?』





場所は繁華街で真上町、
昔、よく行った老舗のカフェでシャンブルと、
メールの最後には夕方6時となっていた。




でも・・・

これはナンダロウ?



悪い夢でも見ているような・・・




メールをもう一度、打ってみたい衝動を抑え、
麻子はそわそわとした数日間を過ごした。




そして、土曜日は足早にやって来たのだった。



・・




真上町のカフェ・シャンブルは、
土曜日の夕方はあまり混んではいなかった。





『・・6時か、まだまだだわ』




土曜日なので仕事は休み、
真上町までは電車で四駅くらいだけれど、
麻子は家でも落ち着かず、
早めに出て来てしまったのだ-




心の底には、
亡くなった友人が来ない方を希望していたが、
反面、何かの確認のような、
そんな気も否定出来なかった・・。


・・





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夏の夜の怪談話 「美しい庭の家」
2016-08-15 Mon 00:48
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 「美しい庭の





抄子には毎日、通勤に出る途中に、
そこを通るのを楽しみにしている場所があった。




その小さく造成された区画の団地は、
およそ十世帯くらいの屋が並んでいたけれど。




春には、
まだ若い桜並木にうす桃色の花が咲き、
また、静かにはらはらと散って行く・・
夏は花壇に植えられた色とりどりの花が競う。




秋になれば、
作為的に作られたのだろう、
々を結ぶ瀟洒なウッドデッキのような木枠に、
蔦が絡まっていて、
晩秋には赤く色づいた葉が落ちている。




何時も近隣にいる野鳥が、
団地に植えられた木の鳥の巣箱に集い・・



それがすずめであったり、
メジロだと思われる鳥だったり、
バードサンクチュアリのようで心地好い。





「・・天国があったら、
もしかして、こんな風な感じかしら」




自分のマンションと言えば、
趣味が昔はスポーツで、
しかもアイテムが少ない陸上部だったし、
どうも一般女性的な趣味が無く、
1LKの部屋は何だか殺風景だった・・。




でもお洒落は嫌いでは無かったし、
容姿を冷静に見てみれば、
悪くは無いのだろうけど、
華やかさには欠けていたりする・・。




特に近年は、
やる気も起こらない会社に転職してしまい、
自業自得とはいえ、
その殺風景さに拍車がかかった感もあった。





・・そんな生活感が欠けた彼女は、
最近までそんな美しい造成地があるなんて、
通過するまで全く分からなかった・・。




どうしてもやや遠回りになり、
足が目が自然に庭と言うか、
ガーデンというイメージの庭へと行ってしまう。



砂を噛むようなまるで潤いが無い生活を、
そのエリアで補うような感じさえする・・。





・・パーゴラと言うのは、
後から聞いて知った単語だけれど、
軒下にあるそれには、
木製の椅子と共に葡萄のつるが巻き付いている。




広い庭には小さいあずまやもあり、
手の込んだ造りについつい見いってしまうのだ。




抄子がその々の間や道を通るのは、
もう一つ、理由があった・・。




じろじろと見ていた訳では無かったりが、
区画の一番端っこのこのには、
まだ幼稚園くらいの可愛い男の子がいるからだ。





そのの奥さんの趣味なのだろう、
歩道や並木や花壇だけではなく、
その子が住む家の庭はことさら花々があり、



抄子が見たことも無かった花や植物で、
まさに百花繚乱といったところ -





「あ、お姉ちゃん、会社へいくの?」




「ユウキ君、お早う、また寄り道しちゃった」




男の子とは目が合った時から、
簡単な会話をするようになっていた。


・・



抄子はそれから気合いを入れながら、
また、会社という社会の中に、
入り込まなくてはいけない気がした。




何気なく通るあの小さな天国が非日常であり、
会社は何年も勤めていても、
頑張ってはみているけれと、
彼女に取っては異空間でもあったからだ。




普通の規模の会社ながら、
まだ男尊女卑も色濃く残ったそこは、
行けば恐妻家と噂される課長が、
早目に来ていて椅子にふんぞり返っている。




机の上のパソコンの前で、
ぼんぼりが付いた耳掻きを使い、
果てはフッとその辺りに息で吹き飛ばす。




『またやってる、不潔だなぁ・・』




課長が朝早いのは、
きっと奥さんに追い出されるからに違いない。




抄子が静かに入って挨拶をしても、
「あ、おっは」とつまらない軽さで返し、
時間で部長が来ればへこへこと煩くお辞儀を続ける。




『・・こんなものなのかしら、どこの会社でも』




彼女に取っては二社目になるのだが、
合わないと感じて
辞めてしまった前の会社の方が、
まだ人間性では勝っていた気がする・・。




退屈な一日がこうして始まる -





・・それから・・・



彼女は何度もあの駅からはちょっと遠回りな、
でも心癒される団地へと足を伸ばした。




特に何時もは朝が多かったけれど、
一度、昼間のムシャクシャした気分を変えたくて、
帰り道に、
ユウキ君の家の前へ寄ってみたことがあった。




夏も終わりに近い時期だったけれど、
だとしたら夕方の6時過ぎなら、
灯りくらい点いている筈の暗さだったのだが。




「あれ?ユウキ君、今日は誰もいないの?」




軒下の椅子には、
男の子が朝に会う時のように座っているのだけど。




「いないよ」




「ママ、お買い物とかなのかな?」




「そうじゃないよ、でも大丈夫だよ」




また来てねと、
彼は言って別れたけれど・・
抄子はふと気が付いたことがあった・・。




『ユウキ君のお母さんて人、
これまで会ったことがあったっけ?』


・・





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夏の夜の怪談話 Part2 「お友達」
2016-08-03 Wed 00:04
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今回はやや微笑ましい(?)
そんな怪談をお読み頂ければ・・・。




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 「お友達」





真夏は自分の名前を好きになるまで、
ちょっと時間が掛かった・・




小さい頃幼稚園なんかではまだ、
幼稚園の制服や持ち物には、
平仮名で『まなつ』と書かれるため、
真夏という漢字が、
何を物語るのか知らなかったため。




それが・・・


小学校の中学年以降にもなれば、
盛夏を表す意味だと分かり、
つまらないいじめっ子たちがシーズンオフ、
秋だとか真冬などにつまらないからかいを始めた。




「や~い、冬なのに真夏~」




・・そんな子は実は、
好きだからからかうという世の常で、
好ましく思っていた男の子たちの行動だった。




実際、小さい頃からくるくると、
天然パーマみたいなカールの癖っ毛が、
彼女の可愛い顔に合っていて、
何処かアンティークの人形のような、
薄い茶色の瞳と共に魅力的なポイントとなっていた。




「まったくもう!」




多くの小さい少女がそんな感じなように、
彼女もまた、
男の子たちの心理までは分からず仕舞い。




たった一人、
かけがえのない身近な友達だけが、
嫉妬もせずに笑って聞いてくれていた -





「・・だからさ、なんでからかう訳?
ずうっとだよ、幼稚園の前からだよ」




友達は似たような年齢なのに、
何時も穏やかに、ある意味冷静に言った。




「それはカールとか可愛いからだよ
男の子は真夏のことが好きなんだよ」




ふーん、と素直になれないのは、
いい加減小学校の三年くらいになれば、
そんなからかいなんて、
ワンパターンでしかなくなり、
飽き飽きしてるのさえ分からない子が多かったから。





「分かったよ、きりこちゃん・・」




真夏の隣には、
何時もきりこと彼女が呼んでいた女の子がいた。




きりこちゃんのことは、
家族、お母さんやお父さんには内緒だ。




何故かと言えば、
初めて彼女のことを見た時に、
・・それは三歳くらいを過ぎた辺りだったか。




越して来た新しい家に、
夜に出て来た『きりこちゃん』のことを、
嬉しくてお母さんに言ったら・・



最初、怪訝そうな顔になり、
それでも話し続けたら、
お母さんの顔が歪んで酷く叱られてしまった。




「誰もいないじゃないの!嘘をつくのはだめよ」




いつも優しいお母さんの、
夜中の恐ろしい顔を初めて見た真夏は、
それ以来、きりこちゃんの話をするのを止めた。





「わたしのことは誰にも言わないほうがいいよ」




「え?どうして?」




「ほかのひとには見えないみたいだから」




「ふうん、そうなんだ・・・
わかった、言わないようにするね」




きりこちゃん、は・・
でもあれからずうっと、
一人っ子の真夏の親しい友達だった。


・・




真夏が十回目の夏を迎えたある日-



夏休みに入ったので、
お父さんの盆のお休みに田舎にある、
お祖父ちゃん、
お祖母ちゃんの所へ行くことになった。




今年も喜んだ・・

毎年、お父さんの休みに、
何日か泊まることにしていた、
祖父母の住む田舎の家が大好きだから。





何時もは車の移動が多かったけれど、
田舎へは、
列車に乗って行くことにしていたため・・


列車の乗り降りや、
その前に駅弁を買ったり、
夏休みにしか出来ない季節限定の楽しみが、
行き来する中や着いてからにも沢山あった。




田舎の家は増改築もされていて、
近くに親族が住む他には、
祖父母以外には誰も住んでいなかった。




そして内緒なのだけど、
毎年、そこには
きりこちゃんも一緒に付いて来たりしていた。




数年以上も彼女と一緒だけど、
誰にも見えてはいないと、
真夏が安心をしてしまい、
一昨日だったか、
近隣の子どもたちと遊ぶ時に、
きりこちゃんを連れて行ったことがあった。




「あ、真夏ちゃん、その子だれ?」




「親戚の子と一緒に来たの?」




え・・とその時、真夏は反対に驚いた。


・・





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夏の夜の怪談話 2016 「アルバイト」
2016-07-21 Thu 00:38
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今年もまた、不定期に怪談を書いて行きます。


拙い文章ですが、
幾つかの話の中に、
皆さんの琴線に触れるお話がありましたら。




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 「アルバイト」





彰生には毎年、
秘かに楽しみにしていることがあった。




それは季節労働とでも言えば良いのだろうか、
いわばこの時期だけのアルバイトだった。




季節労働とは言ってみても、
日頃は駅前の学習塾で教鞭をとっていたため、
別段、独り暮しに困る訳では無かったし・・



何年か前に、
そのシーズンしか開かないバイト先の、
マネージャーだか、
管理者だかに声をかけられたのが最初だった。





「あの・・大変に言いにくいのですが、
ウチでアルバイトをする気はありませんか?」




初めはその接触の仕方が不躾だなと、
ちょっと怪訝な気分だったけれど・・



内容を聞いて行くうちに、
何故か日頃の鬱積が少し晴れるかもしれないと、
マネージャーという男の話を聞いて思った。




『幽霊のバイトか、オモシロイかも・・』




では何故、
彰生にそんな話が来たのかと言えば、
管理者の男はまた、ユニークな言葉を放った。




「生きていらっしゃるのに、
生きてはいない感じが秀逸だからです」




その一言で、
彰生は割と簡単にその季節のアルバイトを受けた。




『生きてはいない感じが秀逸だから』




ふと帰宅した後に、
あの、それこそ影の薄い男に言われた言葉が、
今更ながら気になってはいた・・。




思いがけず彰生は、
これまでの人生を振り返ってしまうことになった。




「確かに、あまりいい生き方じゃなかったけど」


・・




その地方にある大きな遊園地の、
夏を盛り上げるお化け屋敷は、
夏休みという時期とも重なって盛況だった。




保生が最初にその作り物の裏手に行くと、
飄々とした管理者、オーナーが出迎え、
彼にお化け屋敷の中の衣装を手渡した。





「ゾンビですね・・なるほど
あのですね、僕は仕事が他にあるので、
毎日という訳にはいかないのですが・・」




「分かっていますよ、
駅前の塾でお仕事をされている」




「え?前に言いましたっけ?」




それからお化け屋敷のオーナーは、
にこりと薄い笑いを浮かべて言った。




「シフトですが、
昼の11時から夜7時の間で
来れる時には前日までに、
モバイルでメールを送って頂ければ」




彰生は最初から狐につままれたようでもあり、
でも自分では夏期講習の最中、
ストレスが溜まりまくっていたもので、
反対にユルい雇用内容にほっとしていた。




そして・・

初日から彰生のお化けのコスプレが始まった。


・・




むろん、夏は学生たちには大切な時期だ-



それと比例するかのように、
彰生の仕事は相変わらず忙しかったが、
あの遊園地へは、
特に後半のタイムテーブルに空きがあれば、
何故だか心待ちにして向かう自分がいた・・。




・・この二重生活は、
きちんとした態度を当然のように強いられる、
日々の息苦しさのような部分から、
一時的に解放をしてくれていた・・。





何年が過ぎ去ったかも忘れた気がした・・。




その場所はオーナーのカラーが出ているらしく、
そこに集うアルバイトもまた、
少し変わった感じの人たちのように見受けられた。




反対に、でも距離感がある気がしたし、
皆、詮索好きでも無かったため、
彰生は毎年その場へと気楽に足を運ぶことが出来た。





・・ある日・・・



休憩時間に、
どういう訳か前から不思議な噂があった、
鴇田という男の話になったことがあった。




彼は全身古びた包帯に身を隠した、
病院に念を残したというお化け役で、
まともに顔を見たことも無かったのだが・・



珍しく、お化けのスタッフの何人かが・・




「鴇田さんはさ、
実は本当に生きて無いらしいって噂でさ」




「そうそう、彼って一番最後に残るよね
誰もこうして休憩で素顔なんか見たこと無いって」




「・・俺も聞いたことあるよ・・
もしかしたら実体が無いんじゃないかって」


・・






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夏の夜の怪談話 Final 「花火」
2015-08-28 Fri 00:03
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 「花火」





先日、母親が息を引き取った・・。




長い闘病生活だったので、
気遣いもしたのだが、
恐らくは癌だとは思わずに逝ってくれたのだと、
隆次は勝手に感じていた。





母親の妙子はまだ六十代だった -




担当医に聞いたら、
まだ若いため細胞が元気であり、
消化器にも癌が転移してしまったのだと。





医学的な理屈はどうでも良かった、隆次には。
元々は独りのようだったのたが、
生きていてくれるだけで、
この世に誰かと居るのだという励みになる。




でも・・・



そのたった一人の励みが居なくなると、
虚しさや闇雲な張り合いの無さに変わってしまう。




母一人、子一人だった隆次の家庭は、
祖父の古い家には住まわせて貰ったものの、
間取りもあり、
まだ独り身の彼にはちょっと広すぎる気がした。





その茶の間の奥の、
祖父母の位牌のある仏壇の前に、
荼毘に付された亡骸が、
薄い桜色の絹に縁取られた木箱にあった。





隆次は親戚の何人かと、
病院からほど近い火葬場へ行ったのだが、
時間となり、
妙子の骨を拾う時に・・



何だか骨の色が、
前に目にした祖父の骨よりも、
薄紅色のような、濃い色みだった気がし、
その時にようやく母親が、
遺言のように口にしていた言葉を思い出した。





「大野川に散骨して欲しいな・・
あそこだけだもの、
小さい頃からの思い出があるの」




・・その時には、
別段、気にもしてはいなかったけれど、
いざ、ちんまりとした骨壺の中に、
母親の骨が納まってしまうと、
寂しげな彼女の言葉が聞こえる感じがしたのだ。





『散骨って、川だと許可は下りるんだろうか』





納骨を前にして、
隆次は二、三日前に最寄りの役所へ行き、
散骨の許可が下りるのかどうか?・・
係員の人に聞いてみたのだった。





「大野川に骨をって多いんだけどね
近隣に住む人からクレームがあったりして
海はまた違うけど、
川は許可されないんだよね・・」





住民からのクレーム、散骨は川には出来ない-



分かっていた事だったけれど、
せめて、離婚して不遇であった母親の、
最後の望みくらいは叶えてやりたかったのだが・・。





・・それからの事だった・・・




「井田君、退職するのかね?
引き継ぎまで一ヶ月は待って貰えないかな」





「はい・・次の後任が決まるまでは
引き継ぎもきちんとして行くようにしますので」





「次って、井田君は何処か当てがあって
会社を辞めたいのかな?
長い間、ちゃんとした勤務態度だったから
本当はもっと続けてくれると有難いけれど」





確かに隆次は長い間、
何のトラブルも起こさずに、
社員の関わりにもマイナス面は無く、
いわば模範的な仕事の出来る社員だった・・。




小さく溜め息をつきながら、
彼はこんな一言を上司に告げていた。





「・・親戚の花火工場に行こうと思いまして」





「花火工場・・それは決まった事かい?
でもまた、何で花火工場なんだ?」





その質問には敢えて答えずに、
隆次は丁寧に毛筆で書いた退職届を提示した。




実際に、
叔父が経営していた花火工場で欠員があって、
まさかとは思っていた叔父だったが、
母親の内輪だけの葬儀の際に言われていたのだ。




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その後に、一度、
隆次は叔父の家族へ挨拶がてら、
人員が不足しているという工場に足を運んでみた。





火薬を取り扱う関係上、
街中からはほど遠く、
だけれど、その工場からは、
妙子が好きな大野川が広く一望出来たのであった。




よもやと思っていた叔父の宏は、
その時の隆次の返事に驚いた様子だった・・。





「俺で良かったら、働かせて下さい」






工場の仕事は地味なもので、
覚悟はしていたのだが・・・




花火を作るまでには長い道のりのようで、
既に丸く合わせられた花火玉の表面に、
紙を張り付けたり、
基本的な事から始めさせられた・・。





「本気で花火職人を目指すなら、
今に基礎から教えるようにするから」





今はの終わりに近い頃に、
地元で大々的に開催される
大掛かりな花火大会へ向けて、
その準備に大忙しの真っ只中 -




隆次はでも、
作業場が妙子が好きだった大野川に面していて、
上流からの流れが分かるような、
山の上の花火工場に通う事で・・




とうとう彼女の願いが叶えられず、
川への散骨を諦めてしまったこと。




結局は納骨を済ませてしまった呵責を、
そこで、
せめて晴らせるような気分になったものだ。





「あんた、
何でこんな地味な工場へ来たんだい?」





何日か通ううちに、
町の花火工場には似つかわしく無い、
派手では無いけれど
綺麗な娘が隆次に声をかけて来た。


・・





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お盆話2015その2★夏の夜の怪談話「舶来の車」
2015-08-16 Sun 01:13
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 「舶来の車」





加那は・・
少し前に彼が買った物が気掛かりだった。




それはコバルトブルーの車なのだが、
加那には見た事が無いようなイタリアの外車だった。



絵に描いたような流線形と言うのだろうか、
無駄なく美しい車である事には変わらないのだが・・。





「綺麗だろう?無駄も隙も無い美しさだよ」





長くネットや中古車のサイトで探していた、
まだ婚約者といった位置付けの洋輔には、
今は車以外の何も目に入ってはいないようだ。





何故かこれまでの外車と違い、
日に日に加熱して行く洋輔の気持ちとは裏腹に -




加那がその車に対して気に障ったのは、
何時か彼と夜に乗車した時の事があってからだ。





よく、安でな怪談などで、
中古の車に乗ったりすると、
バックシートが濡れていたり、
長い黒髪の女が後ろに座っていたり・・


そんな奇妙な話が存在していたと思うのだが。





一たん、洋輔がコンビニ前に下車し、
降りて飲み物を買いに出た時のことだった。




それまで、何の事は無く、
普通の車中としか思えなかった中、
少し湿った風が車内に吹いて来て、
女性ではなく、知らないの声がしたのだ。





「・・気に入ったかい?」





「え?・・・」





加那は助手席に座っていたのだけど、
その声は隣から聞こえて来た感じがした・・。




え、と洋輔側を見ても、
もちろん、誰もおらず、
そんなこんなですぐに彼が帰って来た。





「オレンジとアップルとどっちが良い?」




「じゃ、アップルの方を」




満面の笑みは、
気に入った車に乗っているご機嫌な顔付きで、
その、ほんの数十秒の不可解な出来事は、
無かったかのような雰囲気に戻ったのだが・・。





『・・聞き間違いだったのかしら・・・』




でも、それから加那が、その流線形の車に、
少し疑念を抱くきっかけにはなったのだった。



・・




ある日、帰宅するには遅くなったのと、
会話が弾んだ後に良い感じになったので、
次が休みだったし、
洋輔のマンションに泊まって行く事になった。





加那がサラダを作っていたら、
ワインにチーズが食べたいと言うので、
彼が近くの大手スーパーに車を走らせた。




ローストビーフがあったし、
赤ワインを飲みたかったので、
ブリーチーズをカットしてサラダと一緒に出した。





「ちょっと飲みましょうか」




海外の食材を主に扱う輸入業者で、
学生の頃に長くバイトしていた洋輔は、
簡単なコルク抜きで器用にワインのコルクを開けた。





「重たくないので飲みやすいわ」




「俺もあまりワインは気にしないけど
もうちょっとハードなのが好みかな」





安定した仕事と少しだけこだわりのある生活、
お互いに干渉し過ぎない時間・・
お酒の趣味も殆ど似ていたし、
来年にでも結婚という声も聞こえていた二人。





食事が進み、酔いも回った辺りに、
彼がこんな事を言った・・・





「そういえばさ、
あの車からこんな物が見つかったんだよ」




「え・・・・」





高い本棚の何処かから、
置いていた小さな何かを取り出した。





「煙草入れだと思うんだ、これ」




それは・・・


少し細みのシュガレットケースのようで、
性の持ち物と言うよりは、
お洒落なイメージの女性の持ち物だったと思われた。




。。



見たとたんに、加那にはあの、
昼間に独りで車に居た時の事が甦った。





『気に入ったかい』





「・・・何かこれ、気味が悪いわ・・」




「そうかな?普通の煙草入れだと思うけど」





すぐに酔いも手伝い、
あっという間に眠気に襲われた彼女は、
そのまま意識が薄れた感じがした・・。


・・




ふと気が付けば、
そこは洋輔の寝室のベッドの上だった -




きっとあのまま、
二人で眠ってしまったのだろう・・・。




そう思っていたら、
隣に眠っていた筈の彼の感じが違っていた・・。




「洋輔、あの・・・」




加那の後ろをゆっくり振り向いた、
そのは歪んだ笑いをこちらに向けた。





「ふふふふふ・・・」





「え、いや、キャー!」





寝室に加那の悲鳴が響いた・・


・・




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