夏の夜の怪談話 2015 「国民的スター」
2015-07-21 Tue 00:42
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「国民的スター」





スタジアムの出待ちのファンを巻きながら、
恐らくは予期しない出口があるのを、
きっと知らないであろう、
群れ集うたちを尻目に・・・




特殊な塗装を施された黒塗りのワゴン車の中、
クーラーの効かせたゆったりしたシートで、
澤木恭介は、
つい今しがたの狂乱と、
々の熱気を思い起こしていた・・。





ステージのそのどよめきと熱気にはただ、
ファンの女性だけでは無く、
シニアの女性や男性も混じっていた。




『・・ふぅ、慣れたとは言え、疲れたな』





特別にブレンドされ、
不規則な時間の合間に体調を気遣い、
事務所が渡してくれた、
マヌカハニーと野菜の入った、
特製ドリンクのボトルを一気に半分空けて、
ようやくため息をついた・・・。




後味には好きなマンゴーの香りが残り、
それは白木に入った、
彼の贔屓筋からの贈答品であって、
一度、一つが2万もする果実の値段に、
少し驚いた事もあった・・・。





彼、澤木恭介は、
30代も後半に差し掛かった、
簡潔に言えば気が安定したスターだった。




気の裏側には何があったのかは、
実は、本にしか知らない秘密が存在していたが
彼はいわば国民的なスターとして、
揺るぎない名声と、
それに伴う多額な富をも手にしていた。





・・恭介はでも、
最初はネット検索をしてしまった、
赤とオレンジの混じったマンゴーの、
口に残った余韻を楽しみながら・・
売れていなかった時代を今更ながら反芻してみた。





ドームにスーパーアリーナなど、
年間、大小百以上ものステージをこなす
アーティストと呼ばれる今・・


それは何だか懐かしく、
でも、そうした活動をスタートさせていない限り、
今の自分には成り得なかっただろう -





・・そんな風に顧みてみたのだが・・・





二十歳前に上京し半年は、
同郷だった友達のアパートに居候をしていた。



友達もバイトでカツカツだったため、
金銭的にはとても豊かとは言えなかった。





当たり前のように、実家に居た頃のような
まともな食事もままならず、
でスーパーの残り物の弁当を半分にしたり、
スーパーやコンビニの見切り品の、
冷えた固いおにぎりを食べた・・。




財布に百円玉すら無くなれば、
パン屋でただの耳を貰って来ては、
残ったマヨネーズやケチャップを付けて食べたものだ。





「冷てえなー」




「風呂があるだけマシだと思えよ」





夏場のシャワーはまだ良かったけれど、
晩秋からは北向の安い部屋だったため、
が、風邪を引いたらお金が掛かるため、
シャワーの温度をぬるま湯スレスレにして浴びていた。





。。



基盤となる練習や地味なライブは、
警察官の目を盗みながら、
ある程度、明日のスターを夢見る若者が、
ランダムに集う地下街や、
辛うじて民衆の手前、
目をつぶる程度に許された公園や路上で行った。




それは、スターになるため
誰しもが考える手段で
自作の歌をアピールしていたのだった・・。





恭介の少し変わった
アンティークブルーのギターは、
既に大分年季が入っていて・・


それは、
中学生の頃に祖父が珍しく
誕生日プレゼントとして買ってくれた
アコスティックギターだったのだが。




それから数年間は、
ギター倶楽部に所属していた兄に、
コードや基本的な弾き方を習って、
闇雲に好きなバンドのコピーをしたりしていた。





高校を卒業した後に、
そんな上京からの日々が何年か続いた-





ある日、
恭介が路上ライブで自作の歌を歌っていたら・・




目の前に置いていた、
桃の缶詰めを切り抜いた中に、
小銭とは違う少し鈍い音が投じられた。





『え・・・』と思い、
投げた人以外には誰も見当たらなかったので、
すぐに中身を見て、
その年老いたお爺さんを見た、
そしてお礼を告げたのだが・・




そこは公園で、しかも夕刻で、
沈み行く日差しは逆光だったため、
老人が長く白い髭がある印象しか残っていなかった。




が、確かに-



彼はやや重たい五百円玉を二枚入れていて、
恭介に不可思議な言葉を囁いたのだった。





「え?それは何故ですか?」




逆光の中、
老人が言った言葉が今一つ、飲み込めず、
そう聞き返したとたんに、
髭の白く長いお爺さんの華奢な姿は、
辺りには無かったのだ。





「ある、五百円玉が二枚」





それから彼は、
一枚で友達と自分のおにぎりと漬物を買い、
もう一枚は大切にジーンズのポケットにしまった。




アパートに着き、
だけれど、老人からは誰にも告げてはならないと、
あの一瞬のような時間に言われ・・



持参した食べ物を友達と食べながら、
何かの間違いでは、と夕方の出来事を思い返した。





余程、何時もとは違う顔付きになっていたのか、
友達の松井には「恋でもしてるのか?」
などとからかわれたが・・



彼は半信半疑で、
あの老人が言っていた言葉通りに、
七月の指定されたある日、
その海の香りがするような、
初めて足を運ぶ神社へと参拝をしたのだった。


・・





m(u_u)m ここでおねがいいたします☆

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ハート事実は小説より奇なり・・
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小さな鳥居をくぐり、
うねうねと続く小高い山を登ると、
そこにはお爺さんが言ったような祠があった。





恭介はあの一瞬の出来事を思った-





「あんたには海神様が似合うとる・・


七月の○日に、四浦海岸の
伊香保神社へ参拝をしなさると良い


その五百円玉を投じて祈ると願いが叶う・・」





恭介がその七月の日に、
四浦海岸の伊香保神社へと向かい、
五百円玉を投じて静かに一つだけの願いを籠めた。





『有名なスターになれますように

なれたらまた、毎月、同じ日にお参りをします』





静寂しか無いような、
夏休みなのに誰も居ない境内には、
向こうに見える海が蒼く美しかった -


・・



・・それからだった・・・



それこそ夢を見ているような続きのように、
路上ライブを少ないファンが、
折しも動画サイトという
ネットでのツールが流行りだし、
そこにアップしてくれたのだ。




その歌を見て聴いたたちがコメントを・・




再生回数は、
当時では群を抜くような何万にも及び、
更に嘘のようにテレビ局の取材がやって来た。





「こちらが最近、
動画でダントツの再生回数になっている
話題のオリジナルを歌っている澤木恭介さんです」





それはほんの小さな、
ワイドショーの一コーナーだったのだが、
歌と共に彼の爽やかなルックスも良かったため、
話題がまた話題を呼び、
また、違うテレビ局の取材が来た・・。




取材の次には、
DLが主流となっている音楽業界の中でも、
著名な音楽プロダクションが、
結構な契約内容を持参し、
あれよあれよという間に
彼は一躍、時のとなって行った。





『・・もしかして?
これは伊香保神社の海神様の・・』





それから・・・



初回の曲だけでは無く、
次回のオリジナルも続けざまにヒットを飛ばし、
一年、二年、そして数年と経つ中、
澤木恭介の名前はことのほか定着をして行った。




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「恭介、ほら・・
今度の会場は変わった趣向だから
いつもの神社に参拝しなくていいのか?」





歌だけではなく、
若手俳優や女優と映画に出演してから、
作品と監督の著名さも手伝って、
恭介は今や国民的スターという位置付けに -




マネージャーはあの時、
彼を居候させてくれていた、
地元の親友だった松井が取り仕切っていた。





「ごめん、時間無い・・どうしようか」





「うーん、ドラマ、
合間に何とかならないか?
コンサートまではもう少しあるだろ?」





今、撮影が決定しているドラマは、
二時間以上、2日に渡るような特別企画であり、
彼、澤木恭介がメインの役者となっていた。





監督はやり手ながら、
手厳しい演技指導でも知られた監督な上に、
共演する俳優や女優も若手では無く、
大御所、大女優と言われているばかりだった。




彼は内心強張りながらも、
とうとう、こうした本格的な主役に
抜擢された事が嬉しくはあった。





変わった趣向をこらしたコンサートと、
その、自分が更に高みを目指すためには、
絶対に外せないドラマ出演という、
真逆な要素の仕事に正直、かつて無い焦りを感じていた。





「松井、伊香保神社
俺の代わりに行って来てくれないか」





「ああ・・・」





一瞬、松井は怪訝な顔をしたけれど、
この状況では確かに余裕は無かった・・。





・・そののち・・・



クランクインした撮影は順調に進み、
同時進行でのコンサートの新たな試みにも、
何時に無く活気がみなぎっているようだった。





そんな中、
そんな試みが観衆の度肝を抜くであろう、
コンサートのリハーサルが前の日に行われた。




この演劇仕立ての、
大掛かりなショー的要素のあるライブは、
一週間に渡って開催される予定だったが、
チケットは既に売り出しから即日に完売していた。




神社に行かなくても、
今の俺だったらきっと大丈夫だと思う』





夏の終わりにオンエアされるドラマも、
ようやく恭介の演技がクランクアップした矢先で、
高視聴率が囁かれる中・・・


彼には、
少し驕った気持ちが芽生えていたことも事実だったのだ。





リハーサルは慎重に進められた-





演技とある意味、歌舞伎とが一体化した、
大掛かりなセットでは、
初の宙吊りに挑戦する恭介が、
入念な打ち合わせの後に、
命綱を何本か身に付けてスタンバイしていた。





「よし、じゃあ、行ってみるよ!」





沢山のスタッフが見守る中、
恭介が少しずつ宙を泳ぐような姿に・・




・・スタッフから歓声がわき上がった・・・





恭介は高い歓声の最中に、
様々なこれまでの自分を思っていた・・。




冷えたおにぎり、パンの耳、


路上ライブ、冷たいシャワー、


動画サイトにファンにテレビ局に・・・





『俺はやった、やれたんだ』






が、宙吊りのおぼつかない空間に、
彼の頭にサッとあの老の顔がよぎった。




『う・・・・・・・・・』






キャー!いや、なに」





「え!どうした?





歓声はすぐにざわめきに変わり、
そして彼は真っ暗闇に飲まれて行った・・・。


・・




次の日の新聞には、
トップ記事に近い扱いで、
昨夜の出来事が書かれていた・・





『国民的スター、
澤木恭介さん事故で急死


コンサートのリハーサル中命綱が切れ
開けられていた奈落の底に落下』





通夜のような澤木恭介のオフィスでは、
通夜どころか、
更に対応に追われるスタッフが右往左往していた。





・・その時、何処からとも無く、
マネージャーの松井の耳には、
聞いたことが無い声が聞こえて来た・・





「・・・神との約束は 破ってはいかんのだ・・・」



・・







すみませんワタシは怪談を書く占い師



・・・怪談も不定期に続くかも・・・


。。









ハート今年は一部に教訓も入れてみます
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m(u_u)m 今年もこのよ~な感じで書いてみます。

誤打は読んでいてね、感想などお待ちしています。

遅れます、色々とすみません・・。



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