夏の夜の怪談話 Final 「花火」
2015-08-28 Fri 00:03
00kai14-01-01.jpg





 00kai14-01-02.jpg






 「花火」





先日、母親が息を引き取った・・。




長い闘病生活だったので、
気遣いもしたのだが、
恐らくは癌だとは思わずに逝ってくれたのだと、
隆次は勝手に感じていた。





母親の妙子はまだ六十代だった -




担当医に聞いたら、
まだ若いため細胞が元気であり、
消化器にも癌が転移してしまったのだと。





医学的な理屈はどうでも良かった、隆次には。
元々は独りのようだったのたが、
生きていてくれるだけで、
この世に誰かと居るのだという励みになる。




でも・・・



そのたった一人の励みが居なくなると、
虚しさや闇雲な張り合いの無さに変わってしまう。




母一人、子一人だった隆次の家庭は、
祖父の古い家には住まわせて貰ったものの、
間取りもあり、
まだ独り身の彼にはちょっと広すぎる気がした。





その茶の間の奥の、
祖父母の位牌のある仏壇の前に、
荼毘に付された亡骸が、
薄い桜色の絹に縁取られた木箱にあった。





隆次は親戚の何人かと、
病院からほど近い火葬場へ行ったのだが、
時間となり、
妙子の骨を拾う時に・・



何だか骨の色が、
前に目にした祖父の骨よりも、
薄紅色のような、濃い色みだった気がし、
その時にようやく母親が、
遺言のように口にしていた言葉を思い出した。





「大野川に散骨して欲しいな・・
あそこだけだもの、
小さい頃からの思い出があるの」




・・その時には、
別段、気にもしてはいなかったけれど、
いざ、ちんまりとした骨壺の中に、
母親の骨が納まってしまうと、
寂しげな彼女の言葉が聞こえる感じがしたのだ。





『散骨って、川だと許可は下りるんだろうか』





納骨を前にして、
隆次は二、三日前に最寄りの役所へ行き、
散骨の許可が下りるのかどうか?・・
係員の人に聞いてみたのだった。





「大野川に骨をって多いんだけどね
近隣に住む人からクレームがあったりして
海はまた違うけど、
川は許可されないんだよね・・」





住民からのクレーム、散骨は川には出来ない-



分かっていた事だったけれど、
せめて、離婚して不遇であった母親の、
最後の望みくらいは叶えてやりたかったのだが・・。





・・それからの事だった・・・




「井田君、退職するのかね?
引き継ぎまで一ヶ月は待って貰えないかな」





「はい・・次の後任が決まるまでは
引き継ぎもきちんとして行くようにしますので」





「次って、井田君は何処か当てがあって
会社を辞めたいのかな?
長い間、ちゃんとした勤務態度だったから
本当はもっと続けてくれると有難いけれど」





確かに隆次は長い間、
何のトラブルも起こさずに、
社員の関わりにもマイナス面は無く、
いわば模範的な仕事の出来る社員だった・・。




小さく溜め息をつきながら、
彼はこんな一言を上司に告げていた。





「・・親戚の花火工場に行こうと思いまして」





「花火工場・・それは決まった事かい?
でもまた、何で花火工場なんだ?」





その質問には敢えて答えずに、
隆次は丁寧に毛筆で書いた退職届を提示した。




実際に、
叔父が経営していた花火工場で欠員があって、
まさかとは思っていた叔父だったが、
母親の内輪だけの葬儀の際に言われていたのだ。




00kai14-01-03.jpg




その後に、一度、
隆次は叔父の家族へ挨拶がてら、
人員が不足しているという工場に足を運んでみた。





火薬を取り扱う関係上、
街中からはほど遠く、
だけれど、その工場からは、
妙子が好きな大野川が広く一望出来たのであった。




よもやと思っていた叔父の宏は、
その時の隆次の返事に驚いた様子だった・・。





「俺で良かったら、働かせて下さい」






工場の仕事は地味なもので、
覚悟はしていたのだが・・・




花火を作るまでには長い道のりのようで、
既に丸く合わせられた花火玉の表面に、
紙を張り付けたり、
基本的な事から始めさせられた・・。





「本気で花火職人を目指すなら、
今に基礎から教えるようにするから」





今はの終わりに近い頃に、
地元で大々的に開催される
大掛かりな花火大会へ向けて、
その準備に大忙しの真っ只中 -




隆次はでも、
作業場が妙子が好きだった大野川に面していて、
上流からの流れが分かるような、
山の上の花火工場に通う事で・・




とうとう彼女の願いが叶えられず、
川への散骨を諦めてしまったこと。




結局は納骨を済ませてしまった呵責を、
そこで、
せめて晴らせるような気分になったものだ。





「あんた、
何でこんな地味な工場へ来たんだい?」





何日か通ううちに、
町の花火工場には似つかわしく無い、
派手では無いけれど
綺麗な娘が隆次に声をかけて来た。


・・





m(u_u)m ここでおねがいいたします☆


 07kaidanb03_20150827235243c2e.jpg


ハート花火には迎え火の意味もある
↓・・今年はこれが最終話です




FC2ブログランキング





人気ブログランキングへ



にほんブログ村 その他趣味ブログ 占いへ
にほんブログ村





やや長いですが先を読んでみたい方は・・・☆







00kai14-01-04.jpg




「叔父さんの工場だから」





「目的は仕事じゃ無いんだろう?」





「え?・・・」





確かに目的と問われれば、
ただ工場で花火玉に紙を貼ったり、
それを運んだりするよりも、
見晴らしのよい場所で、
母親の供養になればと始めたのだったが。





「ふふっ・・でも聞かないから本心なんてさ」





『変わった子だな・・・』




目鼻立ちがはっきりした、
黒い目がくりくりと際立つその女の子は、
悪戯な笑い声だけを残して
隆次の前からさっと立ち去った。





その時・・・


彼は胸にかけてあった、
小さなロケット型のペンダントを握り締めた。



・・




正直、退屈だけだった花火の作業が、
休憩になるとやって来る、
目の瞳が美しい女の子の存在で、
隆次は俄に楽しい気持ちで、
自宅のある町から車を飛ばしている自分に気づいた。





「君はなんて名前だい?」




「カナよ」





カナか・・・



クーラーはある程度あっても、
隆次の古い作業場は暑かった・・



が、彼女が涼やかな顔を見せると、
その場だけ風が吹いて来るかのようだった。





・・の終わりに開催される、
大掛かりな花火大会は来週に差し迫り、
工場での仕事は更に忙しさを増した。




叔父さんは、
花火師・打ち上げ屋との打ち合わせで、
毎日、多忙になっている様子だった・・。





そんな中、
カナは忙しくても顔を見せにやって来た。





「花火、打ち上げ見てみたい?」




「そうだな、紙を貼っただけのヤツでも
見てみたいとか思うかな・・」





「ふう~ん、そうなんだ」




「君は?見てるの、いつも」





「見てるよ、いつも、いつも・・」





・・でも、その日から・・・



多忙さを極めて来たからなのか、
あの涼やかな瞳の女の子、
カナは突然に隆次をからかいに来なくなった。




毎日来ていたため、
そんな時間だけが楽しみになっていた隆次は、
酷くガッカリしてしまった・・。





「隆次さん、明日の打ち上げは見るのかい?」




「おばさん、見に行こうと思ってますが」





同じ仕事をしていた作業場のおばさんは、
ニコニコしながら彼に尋ねた・・。




意を決して隆次は彼女に、
カナという従業員の事を聞いてみたのだ。





「え?カナって、
ウチにそんな名前の子、いないよ」





「え?・・・」




聞き返そうと思ったら、
おばさんはすぐに作業場に戻って行ってしまった。



・・





の終わりにある地元の花火大会は、
イベントや屋台なども立ち並び、
晴天なのも手伝って、
かなりの盛況ぶりとなっていた・・。




大会は6時半に開催されるため、
それに間に合うようにだけ隆次は向かう予定だった。




彼は胸にかけていた、
大切なペンダントが無くなっているのに気が付いた。





『何でだ?作業場に落としたのか』





無いものは無いのだろう、
仕方がないと割り切り彼は会場へバイクを走らせた。





隆次は叔父から、
打ち上げ屋のスタンバイしている、
現場に来ても良いという許可を得ていた。





大野川の中洲は割に広く、
既にきっちりとした仕掛けが設置されており、
後は職人が打ち上げるのを待っているだけだ。




川の向こう側からは、
イベントの司会者らしき女性の声が聞こえて来る。



その場に居たら、
それは熱気も感じたのだろうと思った。





00kai14-01-05.jpg




カウントが始まり、
既に火薬の匂いが隆次の周りを包んでいた。





複雑な火薬の組合せでなし得る、
様々な花火の色の競演・・




花火の火と、遅れて耳に来る音は、
その真下に居る隆次にも感動的な思いを与えてくれる。





母の妙子の死から、
その思いを遂げさせられ無いまま、
花火工場に勤め出した自分・・




大野川の雄大な景色を、
工場の小高い山から眺めていた日々-




そして・・・


分からぬままに消えてしまった、
カナという女の子との他愛ない毎日・・。





・・そんな中・・・



突然に声が聞こえて来たのだ・・・。





「次だよ、次の花火に入っているから」





『え・・・・・』





声だけが隆次の周りに聞こえている・・





「お母さんのお骨、


あの花火玉の中に入れた」





隆次はいつも身に付けていた、
ロケット型のペンダントを思い出した。
そこには少量ながら、
亡き母の遺骨が入っていたのだった・・。





「お骨って、花火って・・」





夜空に六尺玉の大輪が舞った -





・・あの花火に母親の遺骨が?・・・




美しかった・・・




どんな理由なのかは分からないが、
母の最後の桜色の骨片が、
もしかしたら、あの六尺に入っている?




知らぬ間に涙が頬を伝っていた・・。



・・




翌日、彼は工場へ出向き、
残務処理をしていた叔父の所へ行ってみた。




挨拶、昨日の大会の労いや、
雑談の後に、彼は聞いてみたかった事を -





「叔父さん、変な事を聞くようですが
過去にこの工場に
カナという従業員がいましたか?」




忙しそうだった叔父が、
ちょっとびっくりして隆次を振り返った。





「カナって・・・
昔、家で飼っていた猫だよ


ほら、死んだ姉さんが入院した時に、
一番最初にお前が泊まりに来た時にいた


誰にも慣れなかったのに、
一番最初に猫のカナと仲良くなったろう?」





猫のカナ・・・



隆次は、
ふっと昔へと帰った錯覚に陥った・・・。





「カナ、カナ、こっちおいで」





にゃあ・・・




柔らかな毛がひんやりと思い出された。





『カナ、ありがとう・・


お陰で、


母さんの遺骨を大野川に放つ事が出来た』





隆次には、
夕べの大輪の花火の散って行く様が、
目に、耳にまとわりついていた・・。



・・









すみませんワタシは占い師




・・・来年も続くかも・・・


。。









ハート来年もまたお会いする機会があれば・・
↓・・怪談を書いてみたいと思います




FC2ブログランキング





人気ブログランキングへ



にほんブログ村 その他趣味ブログ 占いへ
にほんブログ村


 09kuma013_20150827235344dee.jpg


(゜▽゜*)いつもありがとうございます。

長いですがこのまま記載してみました。

誤打は読んでいてね、レスなど遅れます・・。



別窓 | *占い師の実話に近い怪談話* | コメント:0 | top↑
<<子どもは産むべきか?障害を持つ子のお母さん | すみませんワタシは占い師 | 欲する事をする☆絶不調は睡眠で解消を>>
 
 
 
 
 
 
  管理者だけに閲覧
 

| すみませんワタシは占い師 |